ディープバリュー投資入門紹介

ディープバリュー投資入門

ディープバリュー投資入門という本を読み、感銘を受けたのでご紹介します。

平均回帰

本書では、不人気な割安銘柄は、市場に打ち勝つ傾向にあるが、魅力的な割高銘柄にはその傾向がみられないと述べています。これは、バリュー投資のパフォーマンスがグロース投資のパフォーマンスを上回っているという歴史的事実に合致します。

その理由として、本書では平均回帰を上げています。平均回帰とは、あらゆる結果は平均に近づいていくという統計学的現象をさします。サイコロを振ればある目が出る確率は1/6になるはずですが、振る回数が少なければ、何回も現れる目とそうではない目が出ます。こうした偏りは、振る回数を増やしていくうちに修正され、確率は1/6に近づいていきます。これこそまさに、平均回帰です。

では、平均回帰が株式投資に与える影響を見ていきましょう。同じものやサービスを販売している企業が複数社あり、一方の業績はよく、他方の業績は悪い企業がありました。今後もその傾向が続くと思いきや、企業の業績は平均回帰し、良い業績は悪く、悪い業績は良くなっていきます。

プロスペクト理論

プロスペクト理論を知らない人は多くはないでしょう。ながらく経済学を支配していた効率的市場仮説に一石を投じ、2002年にノーベル経済学賞を受賞した理論です。内容をざっくりいうと、人間は、良い情報と比べて悪い情報に過敏に反応する。というものです。この理論に従えば、

悪い業績を出した企業の株は、良い業績を出した企業の株とくらべて、割安になりやすい

ということがわかります。実際、赤字企業の株なんて、躊躇して買えませんよね?

悪い業績を出した企業の株を買え

ここで、平均回帰とプロスペクト理論を組み合わせると以下のことがわかります。

悪い業績を出した企業の株は、 割安になりやすい。
悪い業績は、平均回帰により良化する。
悪い業績を出した企業の株を買えば、平均回帰により株価の上昇が見込める。

これを知って私は感動しました。身につまされる話ばかりだったためです。株式投資を始めたとき、私はより指標がよく、将来的にも上昇すると思える株を買いましたが結果は散々でした。購入当初は目まぐるしかった業績が、次年度には赤字一歩手前まで悪化してしまったのです。この経験から、私は平均回帰を利用した投資法はうまくいくと感じました。

買収者のマルチプル紹介

平均回帰を利用した投資法がうまくいきそうだとわかったので、今度は実戦的な投資法を見ていきます。本書では、買収者のマルチプルを紹介しています。その公式は、以下の通りです。

買収者のマルチプル = エンタープライズバリュー ÷ 営業利益
エンタープライズバリュー = 時価総額 – 純現金(現金 – 総負債)

ディープバリュー投資入門 買収者のマルチプル

買収者のマルチプルが低いほど、割安な投資対象です。注意として、エンタープライズバリューがプラス(割高)なのに営業利益がマイナスだと、買収者のマルチプルは割安と判断してしまうことがあげられます。本書では言及されていませんが、おそらく買収者のマルチプルが意図するところではないため、こうした銘柄は除いたほうが良いでしょう。

買収者のマルチプルは、その公式を読み込めば、現時点で企業を買収した際に投資費用を回収するまでに要する時間であることがわかります。
エンタープライズバリュー(企業価値)の計算方法は、グレアム流のシケモク投資によく似ています。違いは、エンタープライズバリューが現金のみ資産としているのに対し、シケモク投資は現金に加えて証券等も資産としている点のみです。

エンタープライズバリューが低ければ、営業利益があっても投資対象にはなりえませんし、営業利益がなくてもエンタープライズバリューが高ければ投資対象になりえます。このことから、エンタープライズバリューを計算式に組み入れることで、営業利益が低い(平均回帰をプラスの方向で利用できる)銘柄への投資が可能となっていることがわかります。

買収者のマルチプル ヒストリカルテスト

ここで、買収者のマルチプルが本当に有効なのか、本書が実施したヒストリカルテストの結果を見てみましょう。以下にあげる結果は、米国市場においてそれぞれ1973年に1万ドル投資し、2017年にリターンを計測したものとなります。

買収者のマルチプル 1870万ドル
魔法の公式     760万ドル
SP500       20万5481ドル

ディープバリュー投資入門 買収者のマルチプルヒストリカルテストより

まさに、圧倒的ですね。

買収者のマルチプルは日本でも有効か?

米国市場で買収者のマルチプルが有効なことはわかりました。では、日本市場においても機能するのでしょうか?気になったので、2012年1月から2017年12月までの日本市場におけるヒストリカルテストを実施しました。該当期間で生き残った全上場銘柄から100社をランダムに抽出し、買収者のマルチプル上位銘柄を同額投資した場合のリターンを検証します。早速結果を見ていきましょう。

買収者のマルチプル(上位5社)  415%(税引き後)
買収者のマルチプル(上位10社)  296%(税引き後)
TOPIX            213%(税引き前)

日本市場における買収者のマルチプル検証結果

こちらも圧倒的なリターンですね。ただし、結果をそのまま信用するのもよくありません。以下の2点について懸念が残ります。
 ① 上昇相場しか検証していない
 ② 生存者バイアスを否定できない

上昇相場しか検証していない点について、本来は全てを網羅する期間をとって検証すべきですが、それを実施していません。私の環境では、期間中に上場廃止した銘柄の株価を取得する手段がなく、計測期間を長くとりすぎた場合、むしろサンプルに使用できる企業に偏りが生じるおそれがあったたえです。

生存者バイアスを否定できない点についても、期間中に上場廃止した銘柄の株価を取得する手段がなかったため、生き残った企業のみ分析しています。そのため、実際に買収者のマルチプルで投資した際に上場廃止となる銘柄を組み入れてしまい、ヒストリカルテストより目に見えて悪化したパフォーマンスしか得られない可能性があります。

ヒストリカルテストは、お金という命の次に大事な資産を預けられるか否かを判断すべく行っているため、もっと詳細に分析したいのが本音です。しかし、無料で手に入るレベルの情報ではどうしようもなく妥協したテストとなってしまいました。とはいえ、私はヒストリカルテストによって買収者のマルチプルは日本市場においても有効だと感じることができました。そのため、私は2019年1月より、買収者のマルチプルを実践します。この投資法がうまくいくか否か、人生を賭けて見守っていく覚悟です。

オッペンハイマーのシケモク投資

買収者のマルチプルの話はこれでおしまいです。以降は、ディープバリュー投資入門でかかれたもう一つの興味深い検証結果を見ていきます。それは、オッペンハイマーのシケモク投資です。

オッペンハイマーは、ベンジャミン・グレアムが産みだしたシケモク投資を検証し、次の重要な事実を確認しました。

より割安なシケモクほどパフォーマンスが良い
赤字のシケモクは、黒字のシケモクに打ち勝つ
無配当は、そうではない銘柄に打ち勝つ

これらもすべて、平均回帰が機能しているためとみられています。私にとってこの結果は衝撃でした。私はシケモク投資家ですが、これまで黒字かつ配当がある銘柄を選んできていましたからね。検証はしていないため、鵜呑みにするわけにはいきませんが、今後の私の投資方針に影響を与えると思います。

本書のすすめ

バリュー投資家、賢明なる投資家を読んでその理念に共感された方であれば、読んで損はない本だと思います。少なくとも、私は大いに感銘を受けました。

ただし、前提知識としてシケモク投資の概要を抑えておく必要はあります。シケモク投資の概要が知りたい方は、この記事のベンジャミン・グレアムのバリュー投資をご参照ください。

投稿者: グレアム投資ガチ勢

バリュー・長期投資家。 長期投資があまりにも暇なためブログを開設。 Follow @gold_man_blonze

「ディープバリュー投資入門紹介」への3件のフィードバック

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です